ユビキタスな世界の実現を目指して。Notion 日本1号社員の西氏に聞く、「Notionプロジェクト」開発に込めた想い【後編】
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ユビキタスな世界の実現を目指して。Notion 日本1号社員の西氏に聞く、「Notionプロジェクト」開発に込めた想い【後編】
金子 茉由
2023.07.12
この記事でわかること
西勝清さんがNotionにジョインした理由
Notionプロジェクトの開発秘話
Notionが目指す今後の展望

前編では、2023年6月にリリースされた新機能『Notionプロジェクト』の使用感についてご紹介しました。

新しくなったNotionはどう変わった?エンジニアに便利な機能を試してみた【前編】

今回は、Notionの日本第1号社員で、現在は営業・マーケティング活動をはじめ、ビジネスオペレーション全般を担当する西勝清氏に、Notionが目指す世界新機能の開発経緯についてお話を伺いました。

西勝清氏 プロフィール

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Notion Labs Japan合同会社 ゼネラルマネージャー。
大学卒業後、シスコシステムズへ入社。セールス部門で多数の大手企業のグローバル展開プロジェクトに貢献、社長室戦略チームで事業企画や戦略策定を経験。
2012年 LinkedIn Japanに立ち上げメンバーとして入社。人事向け法人営業部門を統括。
2019年 WeWork Japanに入社。営業シニアディレクターとして戦略と組織を構築、事業拡大を牽引。
2020年9月よりNotion日本1号社員として、営業・マーケティング活動をはじめ、ビジネスオペレーション全般を担当。オランダ・エラスムス大学ロッテルダム経営大学院にてMBA取得。

多くのファンから歓迎されたNotionのローカリゼーション

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金子 茉由

まずは西さんがNotionにジョインした理由を教えてください。

西さん

自分自身の興味・関心領域やライフミッションにマッチする仕事であること。さらに、日本にインパクトを与えられるとても魅力的なプロダクトだと感じたことがきっかけです。

西さん

前者に関しては、自分の興味・関心の軸に、ネットワーク・コミュニティ・コラボレーションという要素があります。これまで参画してきた会社や事業にも共通しますが、「人と人とがつながって、なにかがうまれていく」ことへの興味が強かったんです。 また私のライフミッションとして、「日本企業の生産性を高め、日本が競争力を保つことに貢献したい」という想いがあるのですが、Notionであればそうした願いを実現できるのではと考えました。

金子 茉由

2020年時点で、Notionの事業に携わる日本人メンバーは西さんお1人だったんですよね。

西さん

はい。当時50名ほどのメンバーが在籍するなかで、インターナショナルのメンバーは私1人でした。そもそも、私がNotionを知ったきっかけが、当社のCOOであるAkshay Kothari氏から事業の相談を受けたことでした。 Akshayは私がLinkedIn Japanで営業マネージャーを務めていたときの同僚だったのですが、彼が日本でNotionを展開するにあたって、いろいろと意見交換を行っていたんです。私自身もNotionのプロダクトに魅了されていましたので、なんとか彼と一緒に日本でのビジネスを成功させたいな、と。

金子 茉由

日本でNotionを展開するにあたって、当初どのような戦略を描いていたのですか?

西さん

「コミュニティの方々と一緒に成長すること」を目標に掲げていました。私が入社する以前から、日本国内にはNotionの熱狂的なファンがいて、コミュニティミートアップが開催されたり、YouTubeやTwitter上で活発に情報が共有されたりする状況でした。 最初に注力したのが、コミュニティの方々がNotionにどのような印象をもっているのかなど、ユースケースを収集すること。また、ユーザーの声をふまえてローカリゼーションを進め、日本でも使いやすいプロダクトにしていくことでした。

金子 茉由

日本での展開を進めるうえで、苦労したことや大変だったことは?

西さん

大変だと感じることよりも、むしろ楽しいことの方が多かったですね。ユーザーさんにヒアリングを申し込んだときも、逆にみなさんのほうから「ぜひお話ししたいです」「事例を紹介したいです」といったポジティブな反応をくださって。いかにNotionが好きかを熱く語ってくれて、楽しい時間でした。

金子 茉由

それはモチベーションにもつながりますね。ちなみにNotionファンのみなさんは、具体的にどのようなポイントが気に入っていたのでしょうか?

西さん

当時は「オールインワンワークスペース」をNotionのプロダクト理念として掲げていましたが、まさにユーザーのみなさんも「すべての情報をNotionで管理できる点」「自分の好みに合わせて柔軟に組み立てて使える点」を評価してくださっていました。細かい部分では、パワフルなデータベースや操作性、アイコンのかわいさなど、使い勝手のよさを気に入ってもらえていた印象です。

金子 茉由

その後、ユーザーの反応やニーズに変化は見られましたか?

西さん

機能に対するニーズは、そのときどきの状況によって変化しています。私自身もそうなのですが、Notionは使えば使うほど、“こういう機能があったら便利だな”というアイデアが湧いてくるんです。2020年の段階でユーザーのみなさんからフィードバックいただいた意見は、多くが既に現在の機能に反映されています。現在も日々新たなニーズを伺っていますし、今回のアップデートもユーザーの“あったらいいな”を叶える機能が搭載できたのではないかと思っています。

ビジネス現場ではどのように活用されているのか

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金子 茉由

Notionは個人利用と法人利用、いずれのケースが多いのでしょうか?

西さん

正確なデータは公開していないのですが、どちらの利用も年々増加しています。法人での導入も、はじめは個人利用からというケースが多いんですよ。個人で使ってみたところ満足感が高く、その延長でチームでも利用しはじめる。それが徐々に社内に浸透していき、全社的な導入につながるといった流れです。

金子 茉由

法人利用の場合、どのような規模の会社でニーズがありますか?

西さん

ローカリゼーション前は、主に従業員規模の小さいスタートアップ企業でご利用いただくケースが大半でした。ローカリゼーション後は大企業でのニーズも高まり、まずはDX部門やイノベーション部門を中心に導入いただく流れが生まれました

金子 茉由

日本向けの施策が浸透するにつれ、法人の規模もシフトしていったのですね。企業におけるNotionの利用事例を教えていただけますか?

西さん

チーム内wiki(ナレッジベース)、ドキュメント管理、プロジェクトタスク管理などの目的でご利用いただいています。具体的には、はじめにメンバー紹介やMVV、社内のオペレーションなどを記載したチーム内wikiを作る。次に、企画やプロジェクトをまとめたドキュメントデータベースを作成する。そして、プロジェクトタスク管理機能を利用して、To Do管理を行いながら実務を進めるといった流れです。

金子 茉由

特に大企業の場合は、既にさまざまな情報共有ツールを導入しているケースが多いと思うのですが、そのようななかでどのようにNotionを組み合わせていくのでしょうか?

西さん

最初はスモールスタートで始める企業様が多いです。いきなり全社で導入するのではなく、まずは特定の部門から始めていくイメージです。一方で、複数の情報共有ツールを並行して使用するのは現実的ではなく、どこかのタイミングで集約する基盤を決めなければいけないんですよね。最近はそうした移行のタイミングや進め方について、企業様から相談をいただく機会も増えてきました。

「Notionプロジェクト」開発の背景

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金子 茉由

Notionの今後について教えてください。まずは2023年6月に「Notionプロジェクト」という新しい機能がリリースされました。

西さん

はい。Notionプロジェクトのポイントは、スピーディかつわかりやすくプロジェクト管理ができる点にあります。これまでのNotionでもプロジェクトの管理はできたものの、ユーザーのみなさんから「さらに現場で活用していくために、もっと機能を強化してほしい」という声をいただいていました。

西さん

また、ほかのプロジェクト管理ツールは、どちらかというと硬直的でタスク管理に重点を置いているのに対し、Notionプロジェクトは連携性・柔軟性が高く、チームを横断して協力しながらプロジェクトをカスタマイズできるようになりました。

西さん

さらに大きな特徴として、AIが組み込まれた初めてのプロジェクト管理ソリューションである点があげられます。AI自動入力機能を活用することで、効率的なプロジェクト管理が可能となります。

金子 茉由

プロジェクト管理の利便性が増したということですね。新たな機能を開発した背景として、どのような課題感があったのでしょうか。

西さん

円滑なプロジェクト推進のために、現場で課題としてあがるのが「明瞭性」「スピード」「チームワーク」の3点です。

西さん

「明瞭性」は、新規プロジェクトを立ち上げる際に、その背景や文脈、優先度、担当者などを全員が理解しておく必要があります。

「スピード」に関しては、プロジェクトをスピーディに進めるために、ガイドラインを作成しておくことが大切です。また、できるだけアプリの切り替えを避けることが求められます。

「チームワーク」については、すべてのプロジェクトメンバーが情報にアクセス可能な環境が必要ですし、適宜カスタマイズできる使いやすいツールでなければなりません。

金子 茉由

なるほど、Notionプロジェクトでは、そうした課題を解決できる機能を搭載することを目指したわけですね。

西さん

はい。プロジェクトの進行において、社内で情報がバラバラに管理されていたり、不要なツールにコストをかけていたりといった問題が生じがちです。Notionプロジェクトでは、「誰がいつどのタスクを進めているのかを見ることができて、さらにドキュメント、ナレッジ、他のアプリの情報が1つにまとまってタスクの背景や文脈まで知ることができる」状態をゴールに据えています

金子 茉由

プロジェクト管理の例として、どのような利用の方法を想定されていますか?

西さん

たとえばマーケティングのキャンペーンや、エンジニアの方々が製品開発時に行うスプリント計画、また全社的に使用するOKRプランニングなどを想定しています。

西さん

まとめると、Notionプロジェクトの特徴は主に3つです。1つ目が「プロジェクトに必要な要素をすべて一か所に統合できること」。2つ目が「AIによるサポートを組み込み、生産性を大きく向上させたこと」。3つ目が「プロジェクト管理に必要な機能を大幅に拡充したこと」です。

西さん

その具体的な手段が、「AI自動入力」「ユニークID」「GitHubプルリクエスト連携」「スプリント」「Asanaインポーター」の5つです。

ユーザーの想いを実現できるツールでありつづけたい

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金子 茉由

5つの新機能については、私も実際に試してみて、特にエンジニアのみなさんにとって使いやすい機能が増えた印象を受けました。今後、Notionプロジェクトに関して、さらなるブラッシュアップの予定はありますか?

西さん

はい。今後のロードマップとして、「マイタスク」「チャート」「レポーティング」「オートメーション」の機能を強化していきたいと考えています。ユーザーのみなさんからもご要望が多い機能ですので、ぜひ楽しみに待っていていただければ嬉しいですね。

金子 茉由

Notion AIについては、他のAIを用いたツールとどのように差別化を図っていく予定でしょうか。

西さん

Notion AIの差別化ポイントは主に3つあります。

西さん

まずは「すぐに使える」点です。日常的なドキュメントツールとして使用いただく場合、多くのユーザーさんから“(AIを使いに行くというよりも)AIが自分のもとに来てくれる感覚が強い”という評価をいただいています。

次に、「チームの知識・情報が活かせる」点で、AIの恩恵を最大限に享受できると考えています。現状はAIが単一ページ内の内容を理解して回答を返してくれる仕様ですが、今後はワークスペース全体を把握して回答を提供するシステムの開発も進めています。

さらに、「今後の拡張性が期待できる」点が特徴です。プロジェクト管理のAIサポート機能を備えたばかりですが、今後はチーム内wikiなどにおいてもAI機能を拡張していく予定です。

金子 茉由

AIのアシスト機能がどんどん増えていくイメージなのですね。最後に、今後Notionが目指す世界や展望について教えてください。

西さん

Notionはよくレゴブロックにたとえられるのですが、“Making software toolmaking ubiquitous(誰もが思い描いたソフトウェアを自由自在に組み立てることができれば、世界はより多くを実現できる。そんな世界をユビキタスな現実にすること)”というミッションにも表現されるとおり、「自分で組み立てていく」、また「組み立てたものを人に見せたくなる」という点が最大の特徴なんです。

西さん

今後もNotionを通じて、コミュニティをはじめとしたユーザーのみなさんがやりたいことを実現できるような世界を作りあげていくことを目指しています。特にAIは、そのサポートに最適な手段だと思っています。

西さん

ちなみにNotionは、米国出身の創業者が京都に来たときに最初の一行をコーディングしたツールなので、「日本発のツール」でもあるんですよ。そういう意味でも、ローカリゼーションを含め、より多くの日本のみなさんに違和感なく使っていただけるためのツールにしていきたいですね。

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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